八重山毎日新聞社

　壁に耳あり障子に目あり―。ご存じの通り、隠し事をしようとしても、誰かが見たり聞いたりしているという意味のことわざ。実際に壁に耳があるわけではない、と思うだろう▼石垣島で取材をしていた頃、非公開の会議で壁に耳を当てて聞いている記者を見た。そこまで頑張って聞く内容でもないから「変わった人がいるな」と思ったぐらいで、特に気にしなかった▼沖縄本島で取材をしていると非公開の会議がいくつもあり、多くの記者が集まることも少なくない。そこで目にするのが、この「壁耳」取材だ。閉まったドアや、その近くの壁に耳を当てて中の様子を探る▼もし、一般の人が通りかかったら、壁に耳を当てる大勢の大人を見て「ぎょっ」としてしまう。それは記者たちも十分分かっているので、部外者が来たり、部屋から誰か出てくると感じたら、さっと壁から離れる▼「そんなに聞こえないだろう」と勘ぐっていたが、他社の記者から特別にメモを見せてもらうと8割は聞き取れていた。ここまでの成果があるとは▼ただ、記者の名誉のためにも言っておくが、「壁耳」情報をそのまま記事にすることは絶対にない。あくまでも今後の展開を予測するための参考にするだけ。記事にする場合は、ちゃんと当事者を取材した上で掲載している。（玉津盛昭）