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本紙5-7日付の連載「台湾からの証言者…

 本紙5-7日付の連載「台湾からの証言者たち」で取り上げた嘉義県布袋地区では、水を張った田んぼがどこまでも続いている。長く塩づくりが行われ、その塩田跡が独特の風景になっているのだ▼その沖合で沖縄から疎開してきた子どもたちが亡くなっていた。とりわけ夕暮れ時に美しい表情を見せるこの土地にはそぐわない出来事だ▼あらためて調べてみると、宮古島の女性(1921年生)が布袋に近い海沿いの地域に疎開していた。長男が台湾到着と相前後して高熱を出し、医師の診察を受けるために大きめの町に出向いたという▼幅の広い川に行き手を阻まれ、潮が引くのを待つために野宿もやむなしと腹を決めた時、台湾人がいかだで通りかかり、渡してもらったそうだ。台湾語がしゃべれず、何やら叱られてもいる。移動、病気、よその土地でのコミュニケーション。疎開に伴う困難を一身に背負っていた▼この証言を採録した「城辺町史 第二巻 戦争体験編」は96年の発刊。30年近く前に公になっていた体験を、今になって意識するわが身のうかつさ▼布袋は塩を運び出す港としても歴史が深い。亡くなった子どもたちの遺体が並べられていたという布袋の廟も海のそばだ。ユッカヌヒー(旧5月4日)の前日には付近を練り歩く伝統的な行事がある。(松田良孝)

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