八重山毎日新聞社

　食洗器は手洗いより水の使用量が少なく、仕上がりも美しく、乾燥まで自動で行うため衛生的だ。食器と専用洗剤を入れるだけで、食器が輝くほど清潔になる▼先日、その食洗器が故障した。島内では部品調達に時間がかかるため、手洗いを余儀なくされている。特に油汚れがひどい食器は洗浄に時間を要し、食洗器の恩恵をあらためて実感する▼暮らしを便利にしてくれる時短家電だが、この機会に「効率」という価値観から一歩離れ、あえて手間をかけることで日常に新たな意味や喜びを見いだせないかと前向きに捉え直してみた▼ところが現実は厳しく、食器洗いはやはり手間がかかる。洗剤で手が滑ってカップを落としたり、箸やフォークを洗うとその先端がスポンジを突き破ったりする。すすいでも洗剤が残っている不安が拭えない▼食器洗いひとつをとっても、日常生活におけるテクノロジー依存の深さに気づかされる。日ごろ、いかに多くの作業を機械に委ねているかを痛感。同時に自らの忍耐力や適応力が試される機会となっている。不便な状況でも工夫して乗り切る能力の重要性も再認識した▼この日常の小さな不便が教えてくれたことが、ほかにもあった。それは、普段は見過ごしがちな「名もなき家事」を担ってくれる家族たちへの敬意の念である。（立松聖久）