朗報である。名蔵湾で国指定天然記念物…
- 2025年03月11日
- 不連続線
朗報である。名蔵湾で国指定天然記念物ジュゴンの海藻の「食(は)み跡」が見つかった。2年連続、生息の証拠である。「豊かな海」を象徴するような生き物だけに島々の自然とその可能性を喜びたい▼島々ではかつてジュゴンを「ざんぬいゆ」と呼んだ。明和の大津波前に、桃里村の人々にその来襲を告げた人魚伝説が伝承されている。また、新城島では人頭税の一部としてその干し肉が王府に貢納されたとの歴史も伝わる。人の暮らしに身近な、なじみのある生き物である▼国内では沖縄を北限とする絶滅危惧種。アフリカ東岸からインド洋、オーストラリア海域や東南アジアなど広範囲に生息するが、あまりにも広大、不連続の海域に生息するゆえに全体像は明らかではない▼八重山のジュゴンは1987年、西表島に打ち上げられた死骸を最後に個体が見つかっていない。20年の調査では新城島、黒島、西表近辺で食み跡が確認されているが名蔵湾での生息確認は初めて▼今後、海草藻場の保全策が急がれるが、最大の脅威は人の活動。気候変動や海洋汚染、漁業や観光など課題は多い。近隣ではダイビングスポットが賑わい、陸域には複数のリゾート計画がある▼人魚の食み跡が発するメッセージをどのように受け取るか。試されているのは私たちである。(慶田盛伸)
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