母校・八特支で働く喜び
- 2025年02月06日
- 地域・教育
学生時代は不登校 少しずつ前へ
県立八重山特別支援学校(稲田洋一校長)の卒業生の男性が母校で「教員業務支援員」として働いている。学生時代に不登校だった男性は仕事を通して社会とのつながり方を学び、前向きに人生を歩み始めている。1979年の開校以来、卒業生を雇用するのは初の試みで、障がいのある人の社会参加をサポートしている。
不登校になったのは小学4年生のころ。高校から八特支に入学したが、昼夜逆転の生活で不登校は続いた。卒業が間近に迫る2024年2月、男性は保護者とともに校長室で今後について話し合った。
「校長先生、僕は不真面目だったので留年させてください」と申し出たが、稲田校長から「せっかくだったらうちで働かないか」と誘われ、「えっ!いいんですか」と困惑しつつも覚悟を決めた。同年3月の試用期間を経て、4月から正式に母校で働き始めた。
校長の信頼も厚く
教員の業務は多忙だ。授業以外にもさまざまな仕事をこなさなければならない。支援員の男性は、それまで教員らが行っていた草刈り、花壇や畑への水やり、園庭の手入れなどを担当。教職員の業務負担軽減の一翼を担っている。「平日休んで土日もガッツリ仕事をしている。私にとって大切なスタッフの一員」と稲田校長の信頼も厚い。
男性はふさぎ込みがちの性格だったが、優しく接してくれる学校職員たちによって心の扉が開いていく。「1年前、不登校だった僕は、ここで働くまで社会が怖くて他人と会話もできなかった」が、苦手だったコミュニケーションも取れるようになり、「少しずつ社交的になっているかな」と笑みをみせる。
平日と土日の週5日、強い日差しの日も、手がかじかむほど寒い日も作業の手は止めない。野菜や花卉が育ちやすいよう水やりのタイミングを工夫したり、指導を受けて農業機械も操作したりしている。
「認められたい」
「厳しい上司」と敬う同校の教員から「道具を使うことで作業効率が良くなる」と教わるなど試行錯誤を重ねる日々。「ここ数カ月で、僕の仕事に対して上司から褒められるようになった。もっと褒められて認められるような仕事をしたい」。上司の存在がモチベーションになっている。
働くことへのやりがいは、達成感のほかに「給料をもらえること」。初任給で体を鍛えるという新しい趣味も見つけた。次の目標は車の運転免許取得だ。
同校での就労が社会参加のきっかけをつくり、物事に挑戦する選択の幅が広がった。「これからも継続して八特で働きたいけど、体を鍛えているので警備員とか、何かを守る仕事もしたい」とステップアップも見据えている。
(屋比久賢太)
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