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「昭和レトロ」が若者世代にブームだ。…

 「昭和レトロ」が若者世代にブームだ。若者言葉で言えば「エモい」。初めて見るものも、なぜか切なくも懐かしい感情に揺さぶられるらしい▼調度品が昔ながらの純喫茶、古びた街並みが残る商店街や食事、昭和歌謡、ファッション、さまざまなグッズなど、写真映えするものはすべからく昭和レトロ▼日本人の4人に3人は昭和生まれ。戦後生まれは8割を超える。レトロブームの中心は若者世代でも、下支えしているのは昭和期に青春を過ごした昭和っ子だろうか。それぞれの世代の、それぞれの昭和▼今年の新語・流行語大賞に選ばれた「ふてほど」。昭和の常識と現代の価値観のギャップをタイムスリップで描いたTVコメディードラマ「不適切にもほどがある!」の略称。ここでも時代のトレンドは昭和▼レトロも「ふてほど」も、もてはやされる時代区分は、さほど遠くなく令和に近い昭和。むろん昭和の全体像ではなく、表面の一部分を取り上げている。その裏側には戦争の時代、米軍占領、争乱、公害の頻発、バブル。昭和のあまたの「負の側面」がある▼「尖閣映画」が気になる。遭難事件の史実を直視し、命の崇高さをこそ描いてほしい。昭和のすべてを美化し、ノスタルジー扱いしてはなるまい。年が明ければ昭和100年。冬空にそんなことを思う。(慶田盛伸)

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