基隆塔に上がると、大小の建物に埋め尽くされた…
- 2024年12月16日
- 不連続線
基隆塔に上がると、大小の建物に埋め尽くされた坂の街が見えた。はめ込まれたようにクルーズ船が停泊し、遠くに大型クレーンが何台も立っている(6日付本紙3面)▼石垣から台湾行きのフェリーが運航されていたころ、正月休みに基隆を利用したという読者もいるだろう。与那国町民なら、花蓮市訪問団員として基隆から台湾に上陸した人も多いはずだ▼「静かな基隆港」という本を読んだ(魏明毅著、黒羽夏彦訳、みすず書房)。「ガウ」という独特の響きを持つ言葉をキーワードにして穏やかに進む秀作。グローバル経済に接続され、切断されてしまった港湾労働者の姿を社会学的に分析している▼「ガウ」は、能力があることを意味する台湾語だという。人付き合いを幅広くこなす、トータルな力量を思わる言葉である。しかし、基隆の港湾労働者は、「ガウ」かどうかにかかわらず、苦境に陥っていく▼本書の終章に付けられた題名は「彼らは私たちである」(原文は「他們是我們」)だ。国際的なトレンドの風向きひとつで、だれもが居場所から切り離され、行き先を失いうると読める▼基隆は八重山にとって最も身近な外国への入り口だ。「わたしたち」と無関係ではない。基隆塔からの眺望は、基隆とのつながり相応に人それぞれの風景となる。(松田良孝)
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