古酒を初めて味わったのは二十代。今なら…
- 2024年12月10日
- 不連続線
古酒を初めて味わったのは二十代。今なら馥郁(ふくいく)たる香り、芳醇な風味など様々に表現される古酒ながら、当時はそんな言葉を知る訳もなく「うまい」以外、口にできなかった▼昭和40年代、父の世代は3合瓶を開けると上澄みを庭に捨てた。「油が浮いてる」と言った。昭和50年代、復帰後の好景気に沸く美崎町では泡盛は「シマーぐゎー」だった▼それが今や世界文化遺産である。特筆すべきは泡盛の唯一無二の古酒文化。新築祝いや子弟の誕生、成人祝いに結婚、様々な場面で泡盛が贈答に使われ、覚えのある愛飲家はご厚意に感謝しつつ床下へ。古酒つくりと相成る。我が家でも正月の度に入れたものや、子らの成長に併せメッセージを記した紙包みの一升瓶が眠っている▼皆が好む銘柄でなくても、多少癖のあるほうが化けて美味。30度より43度、瓶のままでOK。自分だけの蘊蓄(うんちく)が増える。甕(かめ)貯蔵を好む友は風味の妙、仕次ぎを楽しんでいる。百人いれば百人の古酒▼さて、飲み頃を迎えた我が家の古酒。あろうことか70歳の壁を前に体力の衰えと酒量の減少を実感。床下にもぐる元気が出ない▼いいさ。孫たちにもきっと酒好きが出て喜ばれる日がくる。次代へ「つなぐ」意義。文化遺産登録にそんなことを思うこの頃。(慶田盛伸)
※本コメント機能はFacebook Ireland Limitedによって提供されており、この機能によって生じた損害に対して株式会社八重山毎日新聞は一切の責任を負いません。
関連するニュース
- 関連するニュースはありません。