イノシシ被害 農家困惑 国が交付金見直しへ
イノシシからの農業被害を受ける農家から悲鳴の声が上がっている。財務省は費用対効果を理由に農水省の「鳥獣被害防止総合対策交付金」の見直しを検討。自治体へは、交付金採択の締め付けとも受け取れる通達がなされている。石垣市の担当者は「事業の年度の途中で採択の条件を変えるといったことはイレギュラー。これまで経験したことがない」と困惑する。サトウキビを栽培する農家の男性は「これでは農家に農業をやるなと言っているのと変わらない」と国の対応に憤りをあらわにした。
財務省は6月、予算執行調査の結果を公表。この中で創設から10年以上経過している侵入防止柵の整備などについて「多数の市町村において不適切な侵入防止柵の設置・維持管理により、十分な効果が発揮されていない」と指摘。実地調査では、獣類による侵入の形跡があるとしている。
市では今年度、農家から60件近い申請を受け付け。申請順で13件分の採択を目指していたが、国が効果的な施設整備の条件として近隣の3農家が合わせて申請する「3戸要件」の原則を持ち出して来たことから、新たな事務処理や調査に時間を要している。例年であれば年内には交付が決定していたが、今年度分はいまだ見通しが立たない状態となっている。関係者からは「費用対効果のことばかりで農家のことは考えないのか」といった指摘も上がっている。
島内でサトウキビやパインアップル、カボチャなどを生産する農家からは「柵を乗り越えるサルやシカが生息しない沖縄も本土と同じ条件を一律で当てはめるのはおかしい」、「イノシシの被害対策には確実に効果が出ている。山に近いほ場に柵を設置すれば、後背地の農家の被害も防ぐことができる」、「害獣被害があっては農業を続ける意欲がなくなる」などこれまで通りの採択を望む声が上がっている。
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