農福連携本格化
八重山育成園
障がいのある人などが農業分野で活躍することを通じて自信や生きがいを持ってもらうとともに地域社会への参画実現を目指す八重山育成園(大泊浩仁施設長)が、農福連携の一環として正月用しめ縄作りの材料に使う稲わらの自家栽培を本格化させている。施設の利用者と職員らは10月22日、新石垣空港近くの水田で初めてとなる作業を行い、25㌃分を刈り取った。
同施設は毎年、石垣市内の量販店などに正月用しめ縄を出荷しており、今年も9月から作業をスタート。すでにスーパーなどから注文が入っているという。
毎年、多くの注文が入る一方、ロシアのウクライナ侵攻の影響が飛び火。輸入飼料高騰のあおりでこれまでほとんど使われていなかった稲わらが牛用の飼料などに転用されたため、しめ縄の材料の確保が難しい状況に陥っていた。
大泊施設長は、姉妹都市の岡崎市にある「大門しめ縄協同組合」(蜂須賀政幸理知長)に相談し、自らの手で稲わら不足を解消しようと自家栽培を決意。背が高く、しめ縄作りに向いた稲の品種「伊勢錦」を導入した。
肥培管理は、親が農家でもある大泊施設長が担当。1期米は穂が実りすぎて倒伏するなど失敗したが、2期米では「中干し」をしないなど穂が実りすぎないように肥培管理を改良し、25㌃の水田で初めての収穫にこぎつけた。
稲はバインダーと呼ばれる稲刈り機で実施。刈られた稲は利用者や職員が一カ所に集め、コンバインで脱穀した。稲わらは乾燥機にかけられた後、しめ縄の材料となる。
脱穀した米は、中干しをしていないことから未成熟。人間の食用には適さないが、同施設が飼育する約1000羽のニワトリの飼料に活用される。
島内でここまで大規模な農福連携は初めての取り組みと見られ、障がい者の就労や生きがいづくりの場を生み出すだけでなく、担い手不足や高齢化が指摘される農業分野の新たな働き手の確保につながる可能性も秘めている。
大泊施設長は「手探りでの肥培管理だったが、なんとか刈り取りにこぎつけた。作業の工程を整理し、利用者のみなさんが安全に楽しく仕事ができるよう検討したい。利用者の製作する正月用のしめ縄は多くの人に親しまれている。来期は倍の50㌃分を収穫したい」と話した。
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