八重山毎日新聞社

　禊（みそぎ）。海や川の水で体を清め、罪やけがれをはらう神道の沐浴をさす。その言葉を総選挙期間中、ＴＶで何度か耳にした▼国民の税金を原資とする政治活動費をめぐる「裏金」事件。選挙の洗礼を受けて当選することで「禊はすんだ」と片付けたい意向がありあり見えて違和感を覚えた▼政権は多少の負けを見込んだに違いない。でも国民の怒りの大きさを完全に見誤った。与党の過半数割れという惨敗、国民の強烈なしっぺ返し。神にもはらえぬほどの罪、けがれの量だったか、思わぬ禊となった▼もともと「逆風」だった。それをスーパー台風並みの大逆風にしたのも自らである。非公認候補がまるで被害者のようにふるまい、その事務所に党が政治活動費2千万円を給付した。「候補者ではなく党勢拡大のため」の説明が国民に理解されるはずもなく、ダメ押しの決定打となった。政治と国民感覚の大きなずれ▼ずれは「基地と経済」を不変の争点とする沖縄と、全国の間に今なお大きく横たわる。同様に、同じ4区といえど本島南部と先島地域では住民間で争点や問題意識が共有されているだろうか。先島住民の九州集団避難に矮小化された台湾有事に不安は尽きない▼混迷期のこの国は、沖縄はどうなってゆくか、島々は。見通せない日々である。（慶田盛伸）