連載【揺れる地域・第2部】〜陸自石垣駐屯地開設1年〜《19》
- 2024年08月29日
住民投票で互いの気持ちを
金城龍太郎さん㊤
「地域の人たちが楽しく暮らしていくというのが僕のなかでの目標。住民投票も、互いの気持ちを認め合うきっかけになると思っている」。
金城龍太郎さん(34)=嵩田=が石垣市住民投票を求める会の代表として運動に取り組む原点には"地域"がある。
同会は2018年10月31日、住民投票実施に向けた署名運動を開始し、1カ月間で石垣市自治基本条例が定める署名数を大幅に上回る1万4263筆を集めた。だが、議会で否決されたことを理由にいまだに投票は行われていない。
昨年3月に石垣駐屯地が開設した後は、周辺地域では「できてしまったもの」について「配備計画に反対」という声を上げる人はほとんどいなくなった。
ただ、「この人たちの思いが、どこに行ったらいいのか分からないまま暮らしていくのも辛いだろうな…」。そんな気持ちを抱えながら、現在も住民投票に関する裁判の原告として市を相手に2回目の訴訟をしている。
「4分の1以上の者の連署による請求があったときは、住民投票を実施しなければならない」と規定する石垣市自治基本条例に基づいて署名運動を行ったが、現在ではこの規定が削除されたため地方自治法に基づき有権者の50分の1の署名と議会での条例制定による承認が必要となっている。
「裁判で僕たちの主張が認められて(こちらの)条例解釈が正しいと判断してもらえたときに、改めて削除された規定の重要さに気づいたり、復活させるきっかけになれば」。
嵩田では、1990年代に平得大俣が石垣市ごみ焼却施設の建設予定地となったときにも、「地理的に地域の近くで起きた問題に対して、地域みんなで取り組む」というスタイルで地域一丸となって取り組んだ。
結果、市と協定を結ぶなどしてより良い方向性を探ってきた。金城さんも幼いころ、地域の人たちが熱心に取り組む姿をそばで見てきた。
陸自配備計画を巡っても、金城さん自身は「政治的な考えよりは、公民館行事の延長線」との考えが強い。それだけに「地域みんながこれでハッピーっていう形で終われば、それできっと僕も落ち着くと思う」と話す。
石垣駐屯地は23年3月に開設され、地元出身の隊員も多く赴任している。幼稚園からの幼なじみもいるといい、自衛隊に対して上の世代と比べるとあまり抵抗感なく育った世代だ。
隊員に関しては「同じ末端という意味で住民と似たようなところにいる存在。運命共同体のような感じ」という認識だ。「隊員が安全でないと、住民も平和に暮らせないと思う。同じ島に暮らしている人だと思って、みんなが健康で平和に生きていけたら」と願う。(三ツ矢真惟子)
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