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連載【揺れる地域・第2部】〜陸自石垣駐屯地開設1年〜《15》

「3地域と比べてもシビアでは」と話す小林丙次さん=1月11日、市内農園

「3地域と比べてもシビアでは」と話す小林丙次さん=1月11日、市内農園

開南の事情はシビア
弾薬庫、集落の最も近くに
小林丙次さん㊤

 「できるまでなんとしても反対。できた後は敬意を持って接したいと思っている。『心境が変わった』というのは、はずれではない。状況に応じて変わっていると思う」。

 中山義隆石垣市長が自衛隊駐屯地の受け入れを表明する直前の2018年から3年間、開南公民館の館長を務めた小林丙次さん(62)は当時と今の心境をこう語る。

 開南集落は駐屯地に隣接する。周辺4地域のうち最も人口が少ない上、駐屯地建設のために土地を提供している人や仕事の都合で推進派に回った人もいる。「開南は、分母が小さいのに分裂してしまっていて、他の3地域と比べても一番事情はシビアでは」と話す。

 小林さん自身は「国境地帯に基地を集中させると緊張感が増す」との考えから反対の立場をとってきた。

 館長になる2年前の16年には開南公民館としても「配備反対」を総会決議ですでに確認していた。特に、住民投票に向けた署名活動(18年11月)から着工(19年3月)までの間は「厳しいけどがんばろう」とまとまっていたという。背景には「身近な生活の場に(駐屯地が)来てほしくない」という思いがあった。

 一方で、「活動していた当時から『国にかなう訳ない』という諦めも多少なりともあって、その意味では(今と当時で)地域の人たちの意識に大きな変化はない」とも。

 もともと少人数で市街地から農業をするために通っている人も多いなか、地域に関わる問題が起きても「蚊帳の外」でいる状態に慣れてしまっていたのかもしれないという。

 ただ、駐屯地は目と鼻の先。一番近い住宅では、道路を挟んで向かい側はもう駐屯地の敷地内だ。

 「なぜミサイルの弾薬庫が集落の一番近いところに設計されているのだろうか。普通なら遠ざける配慮があってもいいのに…」。

 説明会で施設について説明があった際、開南は無視されていると感じた。

 「これだけの集落だから、高齢化してあと10年、20年で誰も何も言えなくなるだろうと思われているのだろう」。

  ◆  ◆

 地域の思いが聞き入れられず、民意も確認されないままに石垣駐屯地が開設して1年余りが過ぎた。第2部では、周辺地域に住む人たちの駐屯地開設前後の心境の変化や、やりきれない思いを抱えつつも折り合いをつけて暮らす人たちの“今”をひもとく。

(三ツ矢真惟子)

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