文化で対立解消を
20年前の沖縄国際大学への米軍ヘリコプター墜落事故を受け、竹富島出身で沖縄国際大学名誉教授の狩俣恵一氏(72)=宜野湾市在住=は「軍用機の飛ばない空、戦争のない世界の実現を目指そう」と実行委員会を発足させ、同大学グラウンドで「OIUNOFLYZONEコンサート」を開催した。プラカードを持ち基地反対を訴える「抗議活動」ではなく、沖縄が世界に誇る芸能や音楽を通して平和への願いを発信する取り組みだった。当時を回顧し、現状への思いを口にした。
2004年8月13日午後2時15分ごろ、沖国大近くの自宅にいたところ、「ドォーン」という大きな音が響き、慌てて外に飛び出した。大学方面で分厚い黒煙が上がっている。「最初は大学近くのガソリンスタンドで爆発があったかと思った」と状況をつかめなかったが、気になって現場に行くと騒然としていた。米軍は現場を封鎖し、事故機体が搬出されるまで日本の関係者は一切立ち入ることができなかった。
そのころの狩俣氏は、同大学総合文化学部の教授に赴任して2年目。琉球芸能文学研究会を発足させ、芸能・文化の研究を専門にしていた。事故を受けて大学側の対応に注目していたが、積極的な活動には後ろ向き。それでも「何とかしないといけない」との衝動に駆られ、「政治に対する思想信条はみんな違うので政治的な抗議活動ではなく、文化や芸能の面なら全体を巻き込み何かできるかもしれない」と「ノーフライゾーンコンサート」を企画、実行委員長を務めた。
コンサートではエイサー、舞踊、三線といった琉球芸能や八重山郷土芸能を披露し、ロックやポップミュージックなど多彩なプログラムも展開。在学生だけでなく、卒業生のプロミュージシャンも出演した。音楽と芸能を通して平和を願う心が一つになり、沖縄、日本、世界へメッセージを発信した。
その後、同学は毎年8月13日に普天間基地の閉鎖を求め平和の尊さを語り継ぐ集いを開催している。
ヘリ墜落事故から20年。今も米軍基地の過重負担を強いられている沖縄の現状について狩俣氏は「沖縄の伝統文化研究者として、私の場合は文化や芸能の面から沖縄を考えている」と独自の発想を話す。
沖縄県民、八重山郡民として政治に対する思想信条が違う住民同士も足元のアイデンティティーを構築させて共通理解を持つことが「重要」と説く。「例えば竹富島の種子取祭。毎年10月か11月に執り行われるが、2年に1度は町長選挙や町議会選挙が種子取前の9月に行われる。革新・保守で割れてけんかしていても、種子取祭になると『みんな同じ竹富島の人間だね』となって頑張る。わだかまりや対立は解消される」と祭祀や伝統文化が持つ力を語る。
この20年間で在沖米軍基地や陸上自衛隊の南西シフト問題が先鋭化しているなか、「沖縄の伝統文化には先祖代々の精神(魂)が宿っている。そのアイデンティティーを見つめ直すことが大事ではないか」と提言する。
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