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モチアワ、未来に残したい スローフード協会「味の箱舟」に登録

「味の箱舟登録食品」の認定証を手にする前本隆一さん(提供)

「味の箱舟登録食品」の認定証を手にする前本隆一さん(提供)

前本さんが栽培するモチアワ(提供)

前本さん(竹富島)認定証

 竹富島などで生産されている在来の「ムチアー(モチアワ)」が、一般社団法人日本スローフード協会の「味の箱舟食品」に登録された。地域の自然や人々の生活と深く結びついているものの生産量が限られていて将来的に消滅の危機にある食品を未来に残そうという世界的な取り組み。先島からモチアワなど在来作物7品目が昨年12月、初めて認定され、国内では64品目となった。竹富島で唯一、モチアワを生産する前本隆一さん(95)にこのほど認定証が届いた。

 八重山では豊年祭や結願祭などの行事でモチアワの穂が五穀のかごに入れられて奉納される。約600年の伝統があると言われ、国の重要無形民俗文化財に指定されている「種子取祭」ではモチアワの種子をおろす儀式が行われ、モチアワなどを材料につくられた餅状の「イイヤチ」も奉納されるなど、欠かせない在来作物となっている。

 竹富島でもかつて多くの農家が栽培していたが、10年ほど前から前本さんのみ。前本さんは25歳のとき帰郷、26歳のころから父親がつくっていたモチアワの栽培に関わり、現在は約990平方㍍で種子まきから収穫まで行っている。

 前本さんは「モチアワの種子をとって種子おろしをする人は私1人しかいない。これをやる人がいなくなると、種子取祭の意味が分からなくなる」と危機感を募らせる。若者の間で作ろうという機運が生まれていると言い、「私が教えられるときにやってほしい」と早期の取り組みを促している。

 今回の登録申請では、在来作物の研究に取り組んでいる東京農業大学宮古亜熱帯農場所属の玉木陸斗さんが申請するなどの中心的な役割を果たした。

 玉木さんは「味の箱舟登録食品は、食の〝世界遺産〟とも呼ばれている。今回の認定は地域の記憶をつなぎ、生産者の誇りを高めることに役立てられる」と喜ぶ。

 一方で「どの地域でも栽培者が高齢のため伝統的栽培と農耕祭祀の継承が不可能となっていくことが想定される」と指摘、「心のよりどころとなっている豊年祭などを継続するためには地域や自治体でサポートしていくことが重要。雑穀栽培を今後ともつなげていくことが現代を生きる私たちの使命ではないか」と提唱している。 

 味の箱舟は▽地域の自然や人々の生活と深く結びついている▽小さな作り手による限られた生産量である▽現在あるいは将来的に消滅の危機にひんしている―ことなどが基準となっている。

  • タグ: モチアワ味の箱舟
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