保育士が足りない 与那国町で待機児童13人
与那国町で保育所に入所できない待機児童が13人いることが分かった。県こども未来部によると、4月1日時点の県内待機児童数(速報値)は356人で石垣市と竹富町は0人。与那国町では記録がある03年度以降、待機児童の報告はなかったが、24年度になって発生した。町は保育士不足を理由に挙げる。待機児童が常態化すると子育てで働けない世帯が増え、小さな島の経済に影響を与える可能性もある。
○欠員確保できず
与那国町では23年度に久部良保育所を祖内保育所に統合したため、町内の保育所は祖納の一カ所のみ。定員は46人で、9カ月~3歳児が入所対象となる。
町長寿福祉課によると23年度末に保育士2人と補助員1人が退職。その後、保育士の新規確保ができず、待機児童が発生した。祖納保育所では現在、11人の保育士で24人の園児を担当している。前年度末は保育士14人体制で37人を受け入れていた。
同課の担当者は「いま0歳児は2人いて、先生1人で見ている状況。補助員が確保できたらあと2~3人は児童を増やせる」と説明、「島内に保育士の有資格者がいるかもしれない。待遇面か他の問題なのか含めて話を聞きたい」と対応を模索する。
保育所職員の基準は県条例に定めがある。保育士は乳児約3人に1人以上、満1歳以上~満3歳未満の幼児約6人に1人以上、満3歳以上~満4歳未満は20人に1人以上などとなっている。
○家がない
町は保育士を対象とした移住体験ツアーを昨年度2月に計画した。日程のつごうでツアーは実施できなかったが、5~6人から問い合わせがあった。
同課の担当者は「地域の担い手に移住してほしいが、実際に住んでもらわないとミスマッチの移住になる。需要があると信じて、今年度は早い段階から調整したい」と話す。
仮に保育士を島外から招くにしても、不動産会社がない町内で住宅を探すことは難しい。ある町職員は「与那国町の課題は住居の空きがないこと。人が住む家がない」と明かす。
町は移住定住促進住宅として5部屋を所有しており、地域行事に参加するなどの条件で2年間住むことができる。ただ、関係者によると、その後は地域の住民と協力して空き住宅を探さなければならないという。それほど家がない。
○足元の人手不足
待機児童と保育士不足は、島の経済に影響を与える懸念もある。町観光協会の入米藏亨事務局長によると、島内では新型コロナ禍が一段落して観光が復活。民宿は観光需要に対応できず、多くの求人を出している現状があるという。従業員不足を理由に休業する飲食店もあり、足元で人手不足が広がっている。
待機児童が今後も増えると働ける親の数が減る。入米藏局長は「そうなれば人手が足りず休業し、事業規模を小さくせざるを得ない。受け入れが厳しくなることで、観光客が減る可能性がある」と危惧する。
(那覇支局・玉津盛昭)
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