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米国で13年周期と17年周期のセミが同時に…

 米国で13年周期と17年周期のセミが同時に羽化する現象が起きている。この「素数ゼミ」の大発生は221年ぶり、江戸時代以来の珍事だ。専門家は1兆匹のセミが現れると予想する▼この独特な生態は、進化的な競争の結果と考えられている。ライバルが互いの戦略に影響され、エスカレートしていったのだ。もっとも進化は目的を持って起こるのではなく、自然選択の過程で生じる▼もちろん進化は完璧な解決策を生み出すわけではない。人間の腰痛は、二足歩行への不完全な適応の例だという。二足歩行は道具の使用など大きな利点をもたらしたが、腰痛という代償も伴った。われわれの体が急速な生活様式の変化に追いついていないことを示すという▼現代では急激に進む都市化や気候変動など人間社会の影響が生物多様性を危機に陥れている。しかし、生物多様性は分かりにくい概念だ▼影響が見えにくく、相互作用が複雑で、時間スケールが長いため、心理的に遠い問題と感じがちだ▼蛙鳴蝉噪。生物の進化に興味をお持ちなら「素数ゼミの謎」(吉村仁著)は外せない。気の遠くなるほどの歳月をかけて積み上げてきた多様性、進化の不思議とセミの謎。本書は、そんな歴史をひもといてくれると同時に、生命の営みに対する畏怖の念を感じさせてくれる。(立松聖久)

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