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「有性生殖」の完全養殖成功 八漁協サンゴ部会

卵から育成したウスエダミドリイシの一斉産卵=5月22日夜、崎枝湾(八重山漁協サンゴ種苗生産部会提供)

卵から育成したウスエダミドリイシの一斉産卵=5月22日夜、崎枝湾(八重山漁協サンゴ種苗生産部会提供)

一斉産卵を前に収集装置の設置を準備する八重山漁協サンゴ種苗生産部会のメンバー=5月16日、川平底地

着床具に幼生が着生しているかどうか顕微鏡で確認する部会員ら=5月28日、環境省国際サンゴ礁研究・モニタリングセンター

着床具に着生する0・5㍉以下の幼生

漁業者の実用化国内初 種苗安定量産に期待

 八重山漁協サンゴ種苗生産部会(砂川政彦部会長、11人)が2017年から崎枝湾海域で取り組んでいる海面サンゴ養殖で、2代目サンゴを育成する「有性生殖」による完全養殖に成功した。同海域で卵から育てたテーブル状ウスエダミドリイシが5月22日夜に一斉産卵し、精子と受精した幼生が着床具に付着しているのを同28日に確認した。漁業者主体で完全養殖を実用化するのは国内で初めて。サンゴ種苗の安定育成にメドがつきそうだ。

 同部会は2017年に5人で設立され、サンゴの卵を収集装置で確保し、着床具に着生させて育成する有性生殖技術で大量にサンゴ種苗を生産する取り組みを開始。同技術は水産庁で開発されたもので、サンゴの一部を採取して断片を着床具に固定する無性生殖と違ってサンゴを傷つけない上、一斉産卵を利用するため遺伝的に多様なサンゴ種苗を生産できるというメリットがある。

 部会は国立研究開発法人水産研究・教育機構水産技術研究所の鈴木豪主任研究員から指導を受け、養殖海域でサンゴ種苗を生産する一連の手法を習得した。2020年からは日本トランスオーシャン航空(JTA)や八重山観光フェリーなど7社1団体で構成する有性生殖・サンゴ再生支援協議会の支援を受けて大量生産に取り組んでおり、部会が独自に生産した種苗と合わせてウスエダミドリイシ約2千群体を育てている。

 今回の2代目サンゴの生産では、2000群体から産卵可能な15群体を選抜して卵の収集装置を5月17日に設置。22日に一斉産卵が確認されたため、3・5㌢四方の角筒型着床具3500個を収集装置に入れた。同28日にサンプルとして34個を取り出して顕微鏡で確認したところ、30個に幼生が着生、完全養殖に成功した。着生率は88%だった。

 部会は「将来的なサンゴ再生ビジョンにつながるものと考えている。養殖海面を、今後のサンゴ再生を進める拠点として活用していくことを目指しており、この活動が軌道に乗れば行政機関主導で実施されているサンゴ保全再生事業を、スピード感のある民間主導の事業として補完できる」としている。

 崎枝湾を養殖サンゴの生産拠点に竹富島の南北や八島沖で育生サンゴを設置するなど新たな展開も進めており、JTAが予定するサンゴ再生ツアーにも活用する。

 石垣市の全額補助を受けて育成している枝状のヤングミドリイシでも25年度内の完全養殖を目指す。

  • タグ: サンゴ養殖
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