連載【揺れる地域①】〜陸自石垣駐屯地開設1年〜
- 2024年03月18日
「嵩田~開南」、候補地の一つに
近隣住民、まだ当事者意識薄く
「僕にとっては賛成、反対のどっちも大切な島の人。その分断が少しでも緩和されるような運動にしたい」。
2018年10月、石垣市嵩田地区のマンゴー農家の金城龍太郎さん(33)は「石垣市住民投票を求める会」の代表に就任した。陸上自衛隊配備予定地が農園兼実家から直線距離でわずか約300㍍先と近かったことに加え、当時28歳ながら人望も買われた。
その約半年前の同年4月には「辺野古」県民投票の会(翌19年2月24日の県民投票実施に伴い、3月26日に解散)で当時27歳の元山仁士郎さん(33)が代表になったことも後押しした。
金城さんは八重山高校卒業後、米国のアーカンソー州立大学に留学し、卒業後は米ジョージア州アトランタで就職。2014年に故郷の石垣島に戻ってきた。
「アメリカから帰ってきて1年後にこの問題(石垣島の自衛隊駐屯地配備への賛否)が出てきた。帰って来た時からうわさはあったけど、場所は崎枝(石垣島西部)なんだよと聞いていて。その時は『ああ、そうなんだ…』としか思わなかった」。
「うわさ」の根拠は、石垣市長選告示日だった2014年2月23日付の琉球新報記事「陸自、石垣に2候補地/防衛省が来月決定」のスクープだった。翌日には沖縄タイムスも「陸自配備石垣に候補地/大崎牧場周辺など複数」の見出しで島内4カ所の候補地を掲載した。
これに対し、防衛省は事実と異なるとして同年2月24日付で琉球新報に抗議、日本新聞協会に対しても「慎重かつ適切な報道を要望する」との申し入れを行っている。
だが、事実だった。
翌15年、防衛省が赤嶺政賢衆院議員(沖縄選出、共産)らに開示した「南西地域資料収集整理業務報告書」で石垣島と宮古島、奄美大島の3島19カ所が陸自配備候補地に挙がっていることが明らかになったからだ。
同年4月9日付八重山毎日新聞は、1面トップで「石垣島に候補地7カ所/南西諸島への陸自警備部隊配備計画」の見出しで報道。推測される選定エリアとして①白保、宮良地区北側(南ぬ島石垣空港南)②旧石垣空港北側③屋良部半島西側④屋良部半島東側(崎枝集落南・半島付け根付近)⑤新石垣空港(カラ岳)北側⑥サッカーパークあかんま周辺⑦嵩田東側~開南西側地域―の7カ所が示された。
このとき初めて開南地域付近が候補地の一つに挙がっていることが分かった。だが、7番目。「ここはたぶんないだろう…」。まだ多くの地域住民たちは、当事者意識を持っていなかった。
◆ ◆
陸上自衛隊石垣駐屯地開設から16日で1年を迎え、駐屯地のある暮らしが日常となりつつある。一方で近隣地域では心にわだかまりを抱えたまま生活している人たちがいる。そんな人たちにスポットライトを当て、予定地の決定から開設までの揺れ動きや今もつづく葛藤を描く。
(三ツ矢真惟子)
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