良好な生息状況を報告 ヤギの分布拡大に懸念も
イリオモテヤマネコ保護増殖事業検討会(座長・石井信夫東京女子大学名誉教授)の2023年度会議が14日、国際サンゴ礁研究・モニタリングセンターとオンラインで行われ、同事業の実施状況や次年度の保護増殖事業の取り組み方針などについて話し合われた。環境省や県、竹富町、民間団体などが参画する10年保全計画連絡会議の交通事故対策や外来種問題、生息地や感染症に関する調査などの活動実績も報告された。
定住個体と非定住個体の出現状況や繁殖状況、生息数の動向などを把握する23年のモニタリング調査では、29カ所に箱型自動撮影装置を設置。オス34、メス15、性別不明2の合わせて51個体が確認された。
これまでメスが確認されなかったエリアで複数個体が撮影されるなど、良好な生息状況が認められた。腹部の毛色から判定する繁殖調査でも3地区で4個体の繁殖が推測されることを確認した。
同調査は1990年ごろから30年以上にわたって行われているが、今回初めて定住するオスが死ぬ場面が映像で記録された。
同調査では外来種の広がりも確認。古見岳周辺で野生化していたヤギが大富前良、古見美原、北岸で撮影され、分布を広げていることが示唆された。一方、ノネコの撮影記録はなく、中西希検討委員は「しっかり管理されている」と評価した。
イリオモテヤマネコを捕獲しての猫免疫不全ウイルス感染症(FIV)と猫白血病ウイルス感染症(FeLV)は毎年実施。今年度は、5頭で実施したところ両検査で全頭陰性。健康状態も良好だった。
高那から野原地区で行われている農地造成のための伐開作業については、環境省と土地所有者の間で話し合いを行い、水場や森林の連続性など配慮しながら実施していくことが示された。
そのほか、交通事故や傷病個体の発生状況、イリオモテヤマネによる家畜被害が報告された。
次年度の保護増殖事業計画では、生息状況の調査・モニタリングや交通事故防止対策、感染症・外来種対策の取り組みを確認した。
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