映画「硫黄島からの手紙」(2006年)を…
- 2024年02月19日
- 不連続線
映画「硫黄島からの手紙」(2006年)を見た。20年近く前の作品を今になって見てみる気になったのは、石原俊著「硫黄島」(中公新書、19年)でひとつの視点に気付かされたからだ▼本書は「―の手紙」を硫黄島の住民に着目して取り上げている。この点を意識してみると、硫黄島の集落を日本兵が行進し、住民が「日の丸」を振ったり、「ばんざい」「頑張って」と声を掛けたりするシーンに目が向く▼ほどなくして、兵士たちが集落で住宅を解体する場面になった。のちに、攻撃で施設が吹き飛ぶシーンがあり、かつて住宅に使われていた材木が施設へとリサイクルされ、結局、破壊されたのだろうか、とイメージが膨らむ▼この島に人が住んでいた―。いくつかの短いカットが頭に刻まれる▼石原氏は本書で「沖縄戦は住民を巻き込んだ唯一の地上戦だった」という表現などを挙げ、硫黄島の地上戦で住民が巻き込まれた「事実をかき消してしまう」と述べる。硫黄島の住民たちは、あるいは地上戦に巻き込まれ、あるいは強制的に疎開させられた▼八重山平和祈念館で企画展「強制疎開―八重山と小笠原・硫黄島―」が開催中だ。企画の趣旨を説明した石原氏の寄稿(本紙6日付7面)を読むと、硫黄島との距離がぐっと近づくように感じられる。(松田良孝)
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