故・與那覇氏が名誉町民に 島の感染症対策に尽力
【与那国】与那国町の公衆衛生看護婦として結核やマラリア、ハンセン病などの感染症対策に尽力した故・與那覇しづ氏(1923年~2010年)の名誉町民称号推挙状授与式が28日午後、与那国町比川の離島振興総合センターで開かれた。與那覇氏の長男で琉球大学名誉教授の波平宜敬さん(74)=東京、与那国町出身=が出席し、糸数健一与那国町長から名誉町民の称号と推挙状が手渡された。同町の名誉町民は與那覇氏で4人目。
與那覇氏は、1955年から約30年間、与那国町の公衆衛生看護婦を務め、レントゲン(エックス線)検診による結核患者の判明に尽力。町内で初めて結核の住民健診を行い、結核を撲滅させた。75年に吉川英治文化賞、79年に日本公衆衛生大会厚生大臣賞を受賞、84年に勲六等単光旭日章を受章した。
2005年にはNHKのプロジェクトXで與那覇氏の人生を紹介した「命の離島へ 母たちの果てなき戦い」が放送され、22年にも再放送された。
それによると、公看になった当時は「島はじきにあうから」と家の中に入れてもらえなかったが、薄暗くなってから検診道具を持たずに訪問するなどして患者らと誠実に向き合ううちに、次第に町民から信頼を得られたという。公看として昼夜を問わず結核やマラリアなどの感染症対策に尽力する傍ら、女手一つで3人の子どもを育て上げた。
授与式には、歴代名誉町民の宮良康正氏(第三号)、西銘順治氏(第二号)の息子の西銘恒三郎氏も出席。糸数町長は「公衆衛生の普及を始めとした貢献は計り知れないもの。地域住民一人一人に寄り添い続けてきた姿を忘れることなく、公衆衛生のさらなる向上にまい進していきたい」と述べた。
長男の波平氏は「仕事を超えていたと思うが、(自分たちが)しっかりしないとと思った」と当時を振り返り、母の「人のために尽くしなさい」との言葉を受け、自身は光ファイバー測定技術の第一人者、次男の宜靖さんはアメリカで内視鏡の専門医になれたと説明。称号授与に「与那国の人たちに認めてもらえてよかった」と喜んだ。
町議会の崎元俊男議長と八重山保健所の比嘉千賀子所長(真地秀門長寿福祉課長代読)も祝辞を述べた。
與那覇氏への名誉町民推挙は、昨年9月の町議会定例会で全会一致で承認されていた。
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