八重山毎日新聞社

　日頃から本を読んでいる人は一定数いる。仕事をする上で必要だとか資格試験のためだとか、いろいろと読む理由がある▼小説は小説を読むために読む感じだろうか。「今まで小説をあまり読まなかった」と同業者に打ち明けると「ふつうは読まない。作り話だから」との返事があった。なんだか記者らしくていいなと感心した▼最近は本の読み方も変わっていて、タブレット端末にダウンロードして読む人もいる。紙の本は重さを感じるため（なんせ原料が木なので）持ち運びには不便。電子端末にデータを入れると何冊でも持ち運べるメリットがある▼一方、紙の本にも魅力がある。本の感想や疑問をそのページに記しておけば、数十年後に読んだ時でも自分の成長を確認できるし“自分の本”という愛着もわく。本そのものの存在感も大きい。読まずに積んでいたら「早く読め」と本に怒られそう▼まあ、何をどう読んでも読書は読書。漢字学者の白川静さんによると「読」には、古代中国人が神への祈りの文である祝詞（のりと）を読むという意味がある。どうやら読むことは尊い活動と言えそうだ▼一日中暑い夏が終わって、夕方はすっかり涼しくなった。ふだん読まない本に挑戦してもいいし、専門的なことを掘り下げてもいい。充実した読書の秋を。（玉津盛昭）