八重山毎日新聞社

　「沖縄の人はみんな優しいなぁ」。先月、わが家に泊まった小学5年生の男の子がぽつりとつぶやいた▼聞いてみると、その子の通う都会の小学校では、子ども同士が肩を組んで遊んでいると「距離感が近すぎる」と周りからたしなめられると言うのだ。保護者は「発達に少し課題があり、友だちにくっついてしまう」と明かした▼旅行で訪れた石垣島では、そのようなことを経験することもなく、むしろ島の子から近づいてきて一緒に遊んだことがとても楽しい夏の思い出になったようだ。母親もわが子の言葉に思わず目を赤くした▼少子化が進む中、自治体では人口増を期待して子育て支援に力を入れる。併せて、そこに住む人たちの人柄や情調など土地の魅力も人をひきつける。それを育むのは、その地域の歴史や文化、自然だ▼いつも昼飯を食べに行く店の女性にその話をすると「同級生は今でも呼び捨て。故郷の西表島に帰れば、みなと手をつないで歩いても違和感がないぐらいだ。故郷の風景は当時に心を引き戻す。変わってほしくないね」と笑った▼石垣島に移住して20年がたった。その間、生まれ故郷の名古屋の風景は大きく変わった。地域活性化の大義のもと、愛する石垣島の風景も変わりつつある。第二の故郷の急激な変貌に一抹の寂しさを覚える。（立松聖久）