八重山毎日新聞社

　先月、久しぶりに与那国島へ家族旅行に出かけた。息子はティンダバナとアヤミハビル館が特に気に入り、滞在中、毎日訪れた。Ｄｒコトー診療所もたずねた。移動中は、バードウオッチングも楽しんだ▼与那国島はバードウオッチャーの聖地。台湾に近いことから渡りの時期には思いもよらぬ「珍鳥」に遭遇することも。そんな時は胸を躍らせ、手を震わせながら双眼鏡で観察する▼しかし異変が。毎回、通っていた田んぼが見当たらないのだ。雑草に覆われ、わずかな水面が残されるだけ。田んぼは湿地としての役割を果たし、渡り鳥たちの休息の場となっているだけに「聖地」の行く末が心配だ▼琉球列島最大規模の湿地帯として環境省の重要湿地に選定されている樽舞湿地では、開発のための掘削計画が持ち上がっている。町教委は「さまざまな分野の専門家との慎重な議論が必要。なし崩し的に進むのは避けなければならない」としているが、こちらも少し心配▼与那国島は特異な地形が美しい。地球科学的な価値を持つ遺産を保全し、教育やツーリズムに活用しながら、持続可能な開発を進めるジオパーク計画もあった▼カジキの刺し身を食べながらやる泡盛は最高だ。冬場のクシティは独特の香りがくせになる。これからも魅力的な与那国島であることを願う。（立松聖久）